タワーマンション特有の騒音とは?床・壁など4つの原因と対策
大手ゼネコンによる施工・一級品の建具・限りなく空に近い静かそうな高層階…
高級物件であるタワーマンションは、騒音問題とは無縁に思えますよね。
しかしタワーマンションには、「床」「壁」「立地」「高さ」の4つの原因による騒音があると言われます。
なぜタワーマンションの「床」や「壁」は騒音に弱いと言われるのか?
タワーマンションの「立地」や「高さ」が原因となる騒音とは?
そこで、
・タワーマンションの騒音問題と4つの原因
・タワーマンションの騒音に備える対策(遮音性の高い床・壁・サッシ等の見極め方)
について解説します。
また2020年3月に運用開始した羽田空港国際線の新ルートによる、飛行機の騒音影響についても解説。
タワーマンションに住むことを検討しているけれど、騒音問題が気になる…
という人は、ぜひ参考にしてください。
タワーマンションの騒音原因は「床」にあり?
ここ数年で建築されたタワーマンションの床(または天井)には
・ボイドスラブ
・二重床
という工法が多く用いられています。
実は、この「ボイドスラブ」や「二重床」に騒音の原因があるとされているんです。
なぜ「ボイドスラブ」と「二重床」は騒音が聞こえやすいのでしょうか?
遮音性の高い床材の見極め方は?
ここからは、タワーマンションの騒音と「床」の関係について解説します。
■タワマンに多い「ボイドスラブ」は遮音性が低い
タワーマンションは、最高部が地上200m近くにもなる超高層建築物。
建物全体の重量を軽くして柱や梁にかかる負担を減らすため、なるべく軽い建築資材が使われます。
一般的にマンションの天井や床には、「スラブ」と呼ばれる鉄筋コンクリート板が使われます。
なかでも最近の高層マンションによく用いられるのが「ボイドスラブ」工法です。
ボイドスラブ工法は、
・室内に柱や梁がない「アウトポール設計」
・バリアフリーの「フルフラット床設計」
などを実現する、最近の新築マンションで人気の構造設計です。
ボイドスラブは、鉄筋と薄いコンクリートの間に空洞パイプを配した構造をしています。
空洞があるぶん一般のスラブより軽量なので、特にタワーマンションの天井・床に多く採用されています。
その反面、空洞があるボイドスラブは遮音性が低く、足音などが響きやすいとされています。
■タワマンに多い「二重床」は遮音性が低い
タワーマンションをはじめ、最近の新築マンションには「二重床」が多く採用されています。
一般的な鉄筋コンクリート建物は、コンクリートスラブに直接床材を貼り付ける「直床」工法が主流です。
「二重床」は、コンクリートスラブの上に防振ゴムをつけた支持脚をのせ、その上に床材(フローリングなど)をのせる工法です。
二重床の支持脚の部分は空洞(空気層)になっているため、配管・配線や床暖房パネルなどを設置することができます。
リフォームやリノベーションの際、配管や配線の配置換え・交換・間取り変更などが簡単にできるため、将来的なメンテナンスのメリットを考慮して、最近のマンションでは二重床が採用されることが多くなっています。
しかし「二重床」は遮音性が低くなっています。
二重床の構造特有の空気層が、音を反響させて大きく響かせてしまうからです。(「太鼓現象」)
直床に比べて二重床の遮音性が低いことは、住宅品質に関する法律(「品確法」)に基づく「住宅性能表示」という公的制度でも証明されています。
■騒音をおさえるには床の「スラブ厚」をチェック
ボイドスラブであれ二重床であれ、遮音性を高めるために最も重要なのはコンクリートスラブの厚み(スラブ厚)です。
マンションで特に気になる「子供のバタバタ足音」や「椅子をひく音」などの重量衝撃音は、スラブ厚が厚いほどシャットアウトできます。
遮音性が高いとされるスラブ厚の目安は
・「一般的なコンクリートスラブ」や「直床」の場合、200mm以上
・「ボイドスラブ」や「二重床」の場合、250~300mm
です。
タワーマンションの購入や賃貸を検討する際は、パンフレットなどで、天井・床の
「スラブの構造」(ボイドスラブか、二重床か)
「スラブ厚」
を確認して、遮音性が高い構造かどうかチェックしましょう。
タワーマンションの騒音原因は「壁」にあり?
タワーマンションの建築資材は、建物の軽量化をはかるため、なるべく軽いものが用いられます。
マンション建築に使われる「壁」の資材は大きく分けて2種類。
・湿式壁(コンクリート)
・乾式壁(石膏ボード)
タワーマンションの隣戸との「壁」には、耐震性が高くて軽い石膏ボードの「乾式壁」が使われます。
乾式壁は、石膏ボードの間に吸音・断熱性のあるガラスウールなどを挟んだ、厚さ150mm前後の資材です。
石膏ボードの乾式壁は、コンクリートの湿式壁に比べると遮音性が低く、衝撃を伝えやすいというデメリットがあります。
たとえばタワーマンションでは
・掃除機のヘッドが壁につぶつかる衝撃音
・子供が壁をける、おもちゃをぶつける等の衝撃音
・玄関ドアやベランダサッシを閉めるときのドンッという衝撃音
などが隣戸から聞こえるのが気になる、という声が多いんです。
■騒音をおさえる壁は「遮音性(TLD値)」をチェック
遮音性に優れた乾式壁を見極めるには、壁の「遮音性能(TLD値)」をチェックしましょう。
TLD値は高いほど遮音性が高く、一般的には
・TLD-56~60
の乾式壁を使用していれば、遮音性が高いマンションといえます。
タワーマンションの騒音原因は「立地」と「高さ」にあり?
タワーマンションで気になるのは、上層階や隣戸からの内的騒音だけではありません。
・駅近など利便性の高い「立地」
・地上100m前後の「高さ」
というタワーマンション特有の条件による、建物外部からの騒音もあります。
ここからは、タワーマンションの騒音と「立地」「高さ」の関係について解説します。
■タワーマンションの「立地」による騒音とは?
タワーマンションは、利便性の高い場所に建っていることが多いです。
複数路線の主要駅が徒歩圏内であったり、中には駅直結という場合も。
駅近ということは、それだけ電車の通過音が近くで聞こえます。
また道路が近くにある場合は、車の走行音・クラクション・緊急車両のサイレン音なども近くに聞こえます。
便利な場所に建っているため、それだけ聞こえる騒音の大きさ・種類も増加します。
■タワーマンションの「高さ」による騒音とは?
高層階ほど地上の音がよく聞こえる、という話を聞いたことはありませんか?
事実、音は上にあがる性質があります。
たとえばマンションの3階相当(高さ8m)の騒音レベルを0dBAとしたとき。
他の階層の騒音レベルは
・13階(高さ40m)…6dBA
・27階(高さ80m)…9dBA
・40階(高さ120m)…10dBA
と、マンションの階層があがるごとに騒音レベルもあがることがわかっています。
(公益社団法人 日本騒音制御工学会 「騒音制御」No.4(2004)PP.238-242より)
■立地や高さによる騒音をおさえるには「サッシの等級」をチェック
電車・車の音など、外の騒音を抑えるには遮音性や密閉性の高いサッシ(ガラス窓)を採用しているかをチェックしましょう。
サッシには、遮音・断熱・耐風圧などの性能によってT1~T4の等級があります。
最上級のT4等級のサッシだと、騒音を40dB遮断してくれます。
音が40dB抑えられると、幹線道路の交差点が、静かな公園に変わるぐらいの効果があります。
実際には、T-3等級(-35dB)のサッシが使用されていれば、ほぼ外の騒音は心配ないといえます。
駅直結や駅近のタワーマンションにお住まいのお客様に聞くと
「窓をあけると確かにうるさいが、窓を閉めていれば外の騒音はほとんど聞こえない」
という方がほとんどです。
ただし高性能サッシは、外の騒音はシャットアウトできても、部屋内の騒音に関してはデメリットも。
高性能サッシで密閉された部屋内は「洞窟状」になり、上階や隣戸からの騒音は部屋内に響きやすくなります。
タワーマンションの高層階は飛行機の音がうるさい?
タワーマンションの最上階ともなると、高さは地上200m近くになることも。
飛行機は、着陸時には地上約300m付近を飛行します。
タワーマンションの高層階は、飛行機の音がうるさくないのでしょうか?
ここからは、タワーマンションの騒音と「飛行機」の関係について解説します。
■羽田空港国際線の新ルートは、タワマン湾岸エリアの上空
2020年3月から、羽田空港国際線の新ルートの運用が開始されました。
新ルートは品川区・港区・江東区におよび、タワーマンションが林立する湾岸エリア上空を飛行機が通過することになります。
国土交通省によると、着陸時に上空300mを飛行機が通過する「品川区」大井町付近では、騒音の瞬間最大値は約76~80dB。
これは地下鉄車内やカラオケ店に近い騒音レベルに相当します。
【dB(デシベル)の値と騒音レベル】
・30dB … ささやき声・郊外の深夜
・40~50dB … 静かな住宅地・図書館
・60~70dB … 騒々しいオフィス・掃除機
・80~90dB … 地下鉄車内・カラオケ店・犬の鳴き声
・100dB … 電車が通る時のガード下
■飛行機の騒音が大きい品川エリアのタワマンは大丈夫?
羽田新ルートで、騒音の影響が最も大きいとされるのが品川エリアです。
しかし品川エリアのタワーマンションは、もともと新幹線を含む品川駅・首都高・羽田空港などに近い立地。
そのためある程度の騒音を想定して、サッシはT3~T4等級の遮音性が高いものが使われています。
弊社取扱物件のうち、品川エリアのタワーマンションのサッシ等級は以下の通り。
■シティタワー品川 … T4等級の二重サッシ(※一部住戸)
■品川ベイクレストタワー … T3等級
■品川ワールドシティタワーズ … T4等級の二重サッシ(※首都高やモノレールに近い低層階)、その他はT3等級
T3~T4等級のサッシは、35~40dBの音を遮断できます。
離陸時の飛行機が、品川区大井町の上空300mを通過する騒音値は約76~80dB。
T3~T4等級(-35~40dB)のサッシを閉めていれば、飛行機の騒音を36~55dB程度に抑えられます。
36~55dBの騒音は、静かな住宅地や図書館と同程度。
つまり品川エリアの多くのタワーマンションでは、サッシを閉めていれば、飛行機通過時でも静かな環境で生活できることになります。
羽田新ルートの運用が始まってからは、ルート下の住民によって騒音被害の行政訴訟が起こるなど、実際にかなりの騒音が起きています。
しかしタワーマンションの住民からは、羽田新ルートの騒音について不満の声をあまり聞かないんです。
やはりタワーマンションには、もともとT3~T4という遮音性の高い防音サッシが使われている影響が大きいと考えられます。
まとめ
タワーマンションの騒音の原因には、
・軽さや利便性を追求した「床」(ボイドスラブや二重床)
・軽さを追求した「壁」(石膏ボードの乾式壁)
・駅前など利便性の高い「立地」
・騒音レベルが大きくなる「高さ」
がありました。
しかし、
■床はスラブ厚250~300mm(※ボイドスラブ、二重床の場合)
■壁は遮音性TLD56~60
■サッシはT3~T4等級
のタワーマンションを選ぶことで、上層階や隣戸・電車や道路や飛行機からの騒音などは、かなり抑えることができます。
また2020年3月に運用開始した羽田空港国際線の新ルートによる飛行機の騒音も、タワーマンションならではのハイグレードな防音サッシによって、かなり抑えられることもわかりました。
床や天井のスラブ厚・壁材・サッシのような建物の基礎は、住んでから変えることはできません。
購入や賃貸を検討する際は、ぜひ遮音性の高い構造をもったタワーマンションを選んでください。